緑川ゆき「蛍火の杜へ」

夏目友人帳」を描いてる作者さんの、2003年に出した短編集です。



とにかく表題作「蛍火の杜へ」が良すぎます。緑川ゆき作品を一通り読み直したくなったので、夏目をはじめとして「アツイヒビ」「緋色の椅子」なども含めて読み返していたのですが、この作品が突出しすぎています。もちろん他の作品も好きですので、機会があったらそちらの感想も書きたいです。




蛍火の杜へ

夏の日、妖怪たちが住むという山の森の中で出会った6歳の少女・蛍と狐のお面をかぶった少年・ギン。ギンは森に住んでおり、人間に触れられてしまうと消えてしまうと語る。夏休みしか山に来れない蛍は、毎年のようにギンと遊び、寄り添い、絆を深めていく。中学生になっても、高校生になってもそれは変わらず、触れられない2人の想いは深まるばかり。というお話です。

クライマックスは、もう理屈抜きで泣いてしまいます。悲しいから泣くんじゃなくて、あまりに切なすぎるから泣いてしまいました。なんで2人とも笑顔なんですか・・・、と。展開的にはありがちかもしれませんが、心の底からの笑顔なのが否応なしに心を揺さぶられました。

木から落ちる蛍を受けとめずに避けるシーンや、「デートみたいデスネー」みたいなセリフなど、そういったシーンのひとつひとつが大好きです。夏目しか見ていない人にこそ是非オススメしたい作品です。



本としては短編集ですので、他の作品も当然ながら短編が並んでいます。テーマとして恋愛モノという縛りがあるらしく、“冷たいけど暖かい”作品ばかりです。年代は高校生が多いです。最後の「ひび、深く」も当然それらに倣っているんですが、こちらは少し色合いが違っていて、兄妹のお話です。兄を見つめる妹の表情と、兄の「あんまり見るな 触りたくなる」というセリフ。この作品も大好きです。



そもそもが、夏目を読み返していたら6巻の「まやびやの隅」に物凄く感動してしまって、他の作品も読み返した次第です。こちらは教師と生徒モノです。最後の2人の照れた顔がとても良かったです。何だか私は作者さんの描くヘタレ男子が好みかもしれません。強気女子ももちろん好みですが。



蛍火の杜へ (花とゆめCOMICS)

蛍火の杜へ (花とゆめCOMICS)