榎本ナリコ「時間の歩き方」(1)

榎本ナリコ先生の最新作は時間旅行のお話です。


主人公の杉田果子(すぎたかこ)は、たまにタイムスリップしてしまうこと以外はどこにでもいるフツーの中学生。タイムスリップといっても自分で制御はできず、3日前の自分の部屋にタイムスリップして、そのまま学校に登校したら3日前の自分に鉢合せしたりしています。そんな不便はあるものの、「タイムスリップしてしまう」ことは仕方がないこととして、フツーに生活をしていた果子の元に、未来から来た時間旅行者(タラベラー)・井村遇太がやってきて・・・。

というお話。結構使い古されている“タイムスリップ”について、“新説”を打ち出した作品です。“時間”はいわゆる「神の見えざる手」が調整している、というお話です。未来で知りえたことを過去に持ち帰って介入しようとも、その後、色々なことが影響しあい、帳尻を合わせて最終的には同じ未来になる、という、いわば“時間の自浄作用”です。一瞬だけパラレル世界が出来上がるような気もしますが、そういうのは、そういうことを考えるのが好きな人にお任せします。


ストーリーとしては、果子の片思いの先輩を助けるために何度も何度もタイムスリップをするのですが、果子と遇太の2人は時間の流れから閉め出されてしまいます。“明日の自分”が目の前で死んだりと結構エグい描写もあったりしますが、その異常な気味の悪さも作品の持ち味かな、と。その後は、元の時間に戻る手がかりを得るために、あちらこちらの時代を移動します。果たして2人は元の時間の流れに戻れるのでしょうか。次巻以降も期待です。



時間の歩き方 I (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

時間の歩き方 I (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)