乙ひより「クローバー」
ある4姉妹の、それぞれの女子高校生時代を、切なく、あたたかく、そして優しく綴った短編集です。
絵柄が好みなのが好きな作家さんである理由のひとつではありますが、話のほうも、登場する女の子全員を強引に恋愛感情に結びつけないところが好きです。また、この作品は1人につき1話ずつ描かれていますが、ある姉妹のエピソードに別な姉妹が関わったりしていて、そういう細かい演出も面白かったです。
4姉妹が織り成す、それぞれのエピソードすべてが好きなのですが、やはり2話目の三女・美鳥のお話が一番好きです。
クリスマスなのに彼氏が居らずにグチをこぼしていたところ、バイトの後輩である女の子に
「お互い彼氏できるまで試しに付き合ってみます?」
と提案され、お試しならと付き合ってみることにした女子擬似カップルのお話です。
恋人ごっこなんてするんじゃなかった
ホントに好きになっても・・・ 好きって言えない
ここまでの心境の変化がとにかく切ないです。最初は本当にただの恋人ごっこから始まって、だんだんと相手のことが気になりだして本気で好きになっていく。相手は全然その気がないようなのに。ずっと相手のことばかり考えるようになったら、それはもう好きになったということなんだと思います。
徐々に気持ちが盛り上がる美鳥とは裏腹に、“恋人ごっこ”のお相手である女の子・杉浦はいつも平然とした態度をとっています。この温度差が山場では余計に切なく。でも最後の種明かしを見た後、最初から見てみると・・・これまた杉浦視点で楽しめる、とても素敵なお話です。
嬉しいことに、この話だけ後日談が描き下ろしでありまして、その話がこれまたものすごく素敵な後日談です。もう大好き。
他の3編も切なかったりあたたかかったりと百合好きにはとても嬉しい一冊です。
できれば1話読みきり以外の連作も・・・と思ったら本誌で新連載が始まりました。とても期待できそうな始まり方で続きが気になります。あと他誌でも描いてくれないかなー、と、描き下ろし作品を見て思いました。百合以外の作風でもきっと楽しめると思います。
- 作者: 乙ひより
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/10/18
- メディア: コミック
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