青木俊直「なのはなフラワーズ」(1)

青木俊直先生待望の単行本です。ご本人が一番待ち望んでいたと思います。帯は志村貴子先生&岩岡ヒサエ先生という、何この神のような豪華な帯は、という気持ちでいっぱいです。いやしかし、帯買いだけでは終わらない、とても素敵な作品でした。



女性限定アパート「なのはな荘」に住む漫画家のタマゴが、あたたかい住人たちに囲まれながら、気になってる編集者と「二人で」漫画家デビューを目指すお話です。



アパートの住人はアパートモノの例に漏れず変な人ばかりでそちらも楽しい
ですが、何より漫画家のタマゴである青砥奈央こと青ちゃんと、奥手でいじらしい恋模様にイライラ・・・いや、ドギマギされます。

大人なんだから遠くに離れるわけでもないのに、と、思ってしまうんですが、ここまで奥手だと逆にそうだな、と思いました。お相手である担当編集者の高中さんが、最後まで青ちゃんを恋愛対象としてみれなかったから・・・という解釈でいいのかな、と。高中さん自身は「恋愛より仕事」な人間みたいですし。

それにしても青ちゃんと高中さんとで飲むシーンがあるんですが、青ちゃんの切なさが伝わってとにかくキュンときました。「妹」と重ねて見られている。それは飲めないお酒も飲んでしまいます・・・。


恋愛パートもですが漫画家パートやアパートパートもなかなか面白いです。アパートの住人を題材にして劇中で漫画を描いたりするんですが、これが結構読んでみたいかも?と思ってしまったり。急に突拍子もない劇中劇が始まったりするので面白いです。というか青ちゃんがお菓子食べすぎなのに笑ってしまいます。編集部に持ち込みに行ったら毎回食べていますし。また食べてるよこの子。という感じです。それから酔った勢いでマフラーをプレゼント結びにしたりしててかわいいです。こういう細かいところを探すのも楽しいです。



漫画を描くのに歳とか性別とか関係あるけどないよ、と思っている私ですが、青木先生はあまりに突出しているのであえて書きます。まず年齢が48歳です。コミティアで気軽に話しかけてすみませんでした。48歳で漫画雑誌で連載→単行本デビューです。おめでとうございます。

さらに男性です。でも描いている漫画は少女漫画風。シチュエーション的にはいくらでも萌え要素を前面に出せるんですが(メイドとか女医とか出てるので)、それを前面に出すわけでもなく、さらには男子禁制アパートで男の存在をほとんど排除し、恋愛も奥手も奥手すぎて成就させない。つまりは真面目に恋に奥手な独身女子の生活を描いてるわけです。これを年齢も性別も違和感を感じさせないのがとにかく凄いです。男性描写も、恋に鈍感な男性を見事に描ききっています。見事すぎて、ちょっとは気づいてほしい、と思ったりもしますが・・・。

というかこれを機にほかの同人作品を商業誌の単行本で出すべきだと思いました。埋もれさせるのはもったいないです。



というかはしレンジャーの作品はどれも一級品すぎて困ります。いや、困る必要はないんですけど。青木先生は今度のコミティアで実演会をされるようで・・・。いいなぁ、いってみたいなぁ。コミティアのペーパーもひときわ目立ってたんですよね。ショートヘアの青ちゃん。ああ何故持って帰ってないんでしょうか。




髪を切った青ちゃん。とても似合ってます。2巻に期待しています。



なのはなフラワーズ 1 (まんがタイムコミックス)

なのはなフラワーズ 1 (まんがタイムコミックス)