月刊コミックビーム 2009年5月号
雑誌の感想です。コミックビームの感想といいつつ、今回も「放浪息子」だけです。
単行本派の方はご注意ください。
◆志村貴子「放浪息子」
胃が痛くなりました。再びにとりんが不登校になってしまったので、心配した友達面々がお見舞いに行く、というお話です。言葉と言葉のぶつかり合いにハラハラしてしまって胃がキリキリ。そしてにとりんのお願い事に対するユキさんの返事でキリキリ。
久々にさおりんが活躍しました。静と動の切り替わりが激しすぎます。最近クールビューティがすぎて世を儚む淡白な娘になってしまっていたので、こういう感情をあらわにするさおりんもいいです。さおりんがちーちゃんに食いかかったところからモモの発言に繋がるんですが、
女のかっこして学校行くようなやつが悪いんじゃないか
思わず出た言葉です。世間一般の言い分としては正しいのでしょう。さおりんは「さわぎになるようなことをした」という意味合いで同意していました。ただ、高槻くんからしたら異性装を否定されてるとしか捕らえられなくてキレたわけで。
その後言い争うモモとちーちゃん。ちーちゃんちーちゃんばっかり言ってたモモですが、ここにきてちーちゃんと大ゲンカをしてしまいました。まさかこういう役柄とは。怒鳴ったシーン、あまりに自己中心的な考えすぎますけど、まったくブレてなくって何だか良かったです。理屈を超えた何かがありました。逆に高槻くんは相変わらずキレると1人でどこかいってて、真面目なシーンですけどちょっと面白かったです。ちなみにこのあとのささちゃんはもちろん最高でした。
今のモモには「女装する奴は異常だ」という一般像を表現させているような気がします。思えば「一緒は嫌だ」と他人の視線を気にしている描写もありましたし、“普通”はそうか、な、と。一般概念としてはこれは普通の考え方なのかもしれませんが、ふらふら彷徨い中である高槻さんにしてみれば、現時点では受け入れることができない考え方です。
なんでおまえなんかに責められなきゃならないんだよ
と。別にモモは悪気はないし責めてるわけでもないんですが、言われたほうは生き方を否定されたも同然です。一般人とのギャップも、普段のメンバーといると忘れがちですがモモのおかげで浮き彫りになりました。いや、おかげというか嫌なお話ですが。
しかし高槻さんは本当にふらふらとしています。まさに中学二年生。まさに思春期。男の子に告白されて舞い上がっ(てるようにさおりんは見え)たり、男装のことを言われると自虐的にキレだしたり。かわいいと言われ、“女”を必死に否定しますがそれが逆に・・・。ああ、嫌だ。早く高槻くんに戻って欲しいです。何だかんだでマイペースに我が道を行くにとりんと比べると、こちらのほうはちょっと黄色信号です。基本ヘタレですし。というか早く“すきな人”に二鳥修一をノミネートしてくださいませんか。まだまだ無理ですか。そうですか。
で、場面は変わって教会にてにとりんとご対面です。何故かフミヤも居ます。いや、居てもいいんですけど、何故か女装しています。何故お前が女装する必要があるのか。さすがフミヤです。何だかさとみちゃんぽいとか言ってはいけません。しかしフミヤは気楽でいいです。
こいつ女になりたいって言うから
じゃあなっちゃえばいいじゃん
て。軽っ。このおおよそ単行本1巻分の挫折と葛藤はなんだったの?というくらい軽いですこの人。というかそれにホイホイと乗っかっちゃうにとりんは相変わらずである意味安心しました。土居の頃から全然変わっていません。基本的に自分に都合のいい道を示した人の意見に流されている感じです。中学生だからそれでいいです。そういう子供達をしっかりと見守るのが大人ですから。
そんなわけで、女になった大人なユキさんのご登場。
あの ぼくがもうすこし大人になったら
ユキさんのお店で 働いてもいい?
このにとりんのお願いに対して
話半分にきいといてあげる
これ、すごくすごく優しい言葉です。安易に「お願いね」なんていいません。冷戦中の母親が来たというのもあるのでしょう。母親がまともに目を見てくれなくなるような、ずっと日陰者として暮らさないといけないような、そんな人生を、まだ中学生の時点で簡単に決めて欲しくないと思ってるのかもしれません。それでも、全否定をしないところがもう、ものすごく優しい。
そんなユキさんですが、次号、いよいよ過去が語られるかもしれません。・・・とかいって、普通に別の話だったりして。次号は恐らく9巻の最後の話になると思います。最後の最後に希望が持てるようなお話であって欲しいです。
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