榎本ナリコ「世界制服」(2)

榎本ナリコが描く不可思議コメディの2巻目。女子高生×世界が織り成す、先の読めない理解不能な展開とテンションが相変わらず面白かったです。


セカイ系作品のパロディが多いのは確かですが、純粋なSFモノとして真面目に世界観を構築していると思いました。特に2巻はそれを顕著に感じました。各話各話で非日常のトンでもない話が広がっていって、教訓めいたもの等々を散りばめておいて、きちんとオトす。毎回毎回これは大変だっただろうと思います。大変だったのが原因かはわかりませんが、次巻からは長編が始まるようです。それはそれで楽しみです。

世界観が確立しているからこそ、同じ世界観の話が出てきたときの面白さが格別です。「KATANA」しかり「夢の左手 現の右手」しかり。同一シリーズでもっと読みたくなります。もちろんそれ以外にも、短編向きのいい話が多く「電影婦警」なんかは特にそう思いました。



「電影婦警」は「お兄ちゃんねる?」という今や世論も左右する超巨大掲示板原文ママ)に犯罪予告を書いたら、警子という16歳の婦警が24時間監視にやってくるというお話です。相手が女だったら警太17歳がやってきて24時間監視します。何この説明・・・。

それでその犯罪予告を書いた引きこもりに対して警子がにこやかに

あなたが変わらない限り、
世界は変わらないんですヨ!
絶対に。

と言い放ちます。本当、まさにその通りかと。

この話、オチもよかったです。何故かBL要素がありましたが、それがまた。それと途中の「お兄ちゃんねる?」の小ネタに笑ってしまいました。

【警視庁公認】ケイタ(♂)17才に萌えてる奴らちょっと来い【男専用】
ケイコの男版はマナブにしなかった警視庁は無能
ケイタ君17才ファンスレ【男子専用・腐禁】


・・・何で男専用が2つも。



ほかに、「「地球」に落ちてきた男」もシリアスな話が続きますがオチも含めて好きな話です。そして今回特に面白かったのが最後に収録されている「夢の左手 現の右手」です。



この話は同じ2巻に収録されている「すがたなき侵略者」「続・すがたなき侵略者」と同一の世界のお話です。「すがたなき侵略者」自体、謎の侵略者に人類が侵略されていくお話であり、話が進むとヒロインが・・・というシーンが来るのですが、そこで何故かヒロインが素晴らしい力を手に入れてしまうという、普段ではありえない超展開がいい感じです。感動シーンの次のページでこれか、という。しかし、こういう展開は何気に好きだったりします。あとこの回のキャラクターデザインに島本和彦先生が一役かってました。


それで「夢の左手・・・」でも「すがたなき侵略者」で起こっている悲劇が起こります。人類が静かに侵略されるという、絶望的なお話です。お話的には、侵略者の1人と人間である進一(この名前・・・)との絆が深まるのももちろん良かったのですが、進一の意中の人である天森さんが非常に残念な人だったのがツボにきました。話的にも主人公とヒロインが実はお互いを想ってたとか、主人公とヒロインは実は同じような境遇にいた仲間だとか、こういうキュンキュンする展開なのにヒロインが残念な変態さんなのがとても素敵です。・・・残念なのは私だという。

しかしこの話、母親も侵略者にやられたり、人類抹殺計画が執行されたりと、手放しで笑いながら読めないんですが、そういう“気持ち悪さ”も含めて面白かったです。ネムキでも同じような話を描かれてたみたいで、ちょっとネムキさん短編集をお願いしたいんですが。



・・・それにしても女子より女装男子のパンチラが多かったり、女子より男子の裸が多かったりと、青年誌にしては色々とおかしいです。島本先生のサービスシーンもありますしね。誰が得・・・まずは作者さんですね。



世界制服 2 (サンデーGXコミックス)

世界制服 2 (サンデーGXコミックス)