久米田夏緒「ボクラノキセキ」(1)

俺は


版図を拡大せんとする国々が
剣と魔法による戦争を 永く続けている世界の
小国ゼレストリア 第三王位継承者
ベロニカ


だった


「滅ぼされた国の王女」という前世の記憶が色濃く残る主人公・皆見晴澄は、幼いころにそのことを公言してしまい、周囲から孤立した小中学生時代を送っていた。高校生になっても前世の記憶は消えてはいないが、今は前世の“ベロニカ”ではなく“皆見晴澄”として生きているため、普通の男子高校生として周囲に溶け込みながら平穏に暮らすことに。時折、前世の記憶を思い出したとき、ノートにそれを書き記しながら前世との繋がりを得ていたが、ある日そのノートをクラスメイトに見られてしまう。その場では何事も無かったが、放課後、それを読んだ生徒に異変が起きて・・・。



と、「生まれ変わり」を大真面目に取り扱った作品です。主人公の皆見は、作中でいきなり好きな女の子である高尾春湖に告白をして両想いになったりします。しかし、実はこの女の子は、王女ベロニカの護衛をしていた女剣士・リダの生まれ変わりという事実が明らかになります。滅ぼされた国の王女の護衛、つまりは王女を守りきれず死んでしまった従者なわけですが、それが生まれ変わったら好きな人同士になったわけですよ。これぞまさに輪廻転生。

前世のことを知らない間はお互い普通にタメ口で話したり、告白後にいい雰囲気になったりしていましたが、春湖が前世のことを思い出した後は急に敬語になってひざまずいたり、皆見のピンチに武器を持って護衛したりと、2人の関係は完全に主人と従者になってしまってます。“皆見”として生きる皆見にとって、それはとても悲しいことなのですが、正直このシチュエーションは非常に良いです。前世では2人は女同士、深い絆で結ばれていたのですが、それ
が男と女になってしまってるのもこれからの素敵な展開を予感させます。しかし従者になってからの春湖は非常にかっこいいです。なので皆見くんには悪いですが、春湖さんにはこのまま従者として行動して欲しいなぁ、とか。





皆見の通う高校には何故か前世の縁者が集っているみたいです。何故、前世の記憶がはっきりと再現されるのか。ベロニカの国が滅びた理由とは。そのあたりも含めて気になります。それから周囲から孤立していた中学時代に、唯一できた理解者である上岡との関係も楽しみなところです。というわけで次巻に期待です。



ボクラノキセキ 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

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