月刊コミックビーム 2009年7月号
雑誌の感想です。いつもの通り今回も「放浪息子」だけです。
単行本派の方はご注意ください。
◆志村貴子「放浪息子」
おそらく9巻の最後の話だと思います。長かったトンネルにようやく出口が見えかけたかも、という展開です。
【追記】
(9巻の最後は先月号でした。この回は10巻の頭になるようです。)
それにしてもフミヤがここまで自由すぎるキャラになるとは、初期のころからは想像できませんでした。タバコ吸ったりしてる彼は、恐らく何かしら抱えてるものがあるのだと思います。軽い性格もそこらへんから来てるのかな、と。後先考えてないだけのような気もしますが・・・。そういうわけで、女装姿でナンパされちゃおう、とかいう危険なアソビをしでかす彼らです。泣く以外の感情が豊かになるにとりんを見てちょっとほっとしてます。
いや、しかしですね。このフミヤは・・・最初、嫌な奴だったような・・・。でも性格あんまり変わってないような・・・。p140の3コマ目の処理のところで「おとなりラブ☆パラダイス」を思い出しました。なんで乙女オーラが出てるんでしょうか・・・。いや、だまされてはいけません。
ぼくまでクセになりそうだよ こんなこと
だなんて、もっとクセになれとか思ってはいけません。
髪のばしゃいいのに
だなんて、にとりんに対してよく言ってくれた!とか思ってはいけません。ボブショート・・・ダメです。もっと強く言ってあげてください。
それから
・・・・・・なんかよくわかんなくなってきちゃった
すきになるとか なられるとか
彼氏とか 彼女とか・・・
というにとりんのセリフ。とても深くて重い言葉です。
先月くらいから強く意識してますが、このあたりの話をずっと、志村先生は描きたかったんじゃないのかな、と思ってます。志村先生は直接的な表現は好まないということなので、無理やりカテゴライズするのも何ですが、一応。
二鳥修一くんは「女の子になりたい男の子」で、恋愛感情は今のとこ女子に向いてます。これが「男が好きで女になりたい。」とか「女装はしたいけど女の子にはならなくてもいい。」なら、もう少しわかりやすいんですが、そう単純なものではない。いや、本人からしたらすごく単純なんですけども、周りはそうは見てくれない。そもそも女装も性転換もマイノリティすぎて誰からも認められない。だから家族、学校、恋人に至るまで誰も自分を理解してくれなかった。そういうときに悪意もなしに自分を認めてくれる人が居るだけでどれだけ心強いことか。どれだけ励みになるか。フミヤという存在がどう転ぶかはまったくわかりませんが、真っ逆さまにおちそうな今の修一を支えてくれれば、と思います。。。しかし、フミヤは何も考えてなさそう・・・。いや、フミヤだからそれでいいのかもしれませんが。むしろそれがいいのかも。ほかの友達だと深みにはまってしまいそうですし。
しかしながら、フミヤにしても土居にしても、マコちゃんにしても高槻くんにしても、にとりんが自分を認めてくれた人の言うことを素直にききすぎるのは危ういな、と思っていましたが、よく考えてみると当たり前のことだと思いました。
・・・と、いうわけで。
おまえが女でもいいっていう
物好きな女じゃないと 無理だと思うよ
というわけで。
にとりんのことを認めてくれる上に、女でもいいっていう物好きな女、千葉さおりさんのターンがやってきましたよ。上のセリフを見てすぐに思い浮かびました。と、思ったら、何だか静かににとりんを誘ってる千葉さんがすごく怖いです。目が死んでるのがとても。1巻のころの目と比べ物にならないくらい死んでます。素敵。あんなちゃんもダメで高槻くんも戦線離脱しているこの状況、さおりん以外誰も居ませんよ。・・・なんか堕ちるところまで一緒に堕ちていきそうなイメージがあるのですが・・・。
今回も見所盛りだくさんでした。Beckとか、「ズチューー」とか、また男同士でトイレの個室に侵入とか、まほが元気になってよかったとか、保健の先生再登場うれしいとか、兼田とマコがBLチック(マコの一方的な)とか。というか年取ってだいぶ落ち着きすぎな兼田先生でした。元々ゆるーいキャラではありましたが。
前回のユキさんの話に、今回のあんなちゃんの
きっと いろいろ ちゃんと調べなきゃいけないことがあるよ
というセリフに、そろそろ避けて通れない具体的な将来が見えてきたように思えます。・・・とは言っても、ユキさんが言うように、今すぐ決めろという問題でもないわけですが。このあたりも当事者と第三者の意識の違いがきちんと出ていて地味にいいなぁ、と思う場面です。
そういうわけで、改めて「放浪息子」という作品と「志村貴子」という作家のすごさを味わいました。次号も楽しみにしています。
・・・ちなみに最後のページをみて「もしかして最終回!?」と思ったのは私だけでいいです・・・。
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