マンガ・エロティクス・エフ VOL.58

雑誌の感想です。
単行本派の方はご注意ください。特に青い花のアニメから入ってきた方などは致命的なネタばれがありますのでご注意ください。


                       
                       
                       
                       

志村貴子青い花
結論を言えば今回は




演劇祭開始直前のお芝居に臨むあーちゃんの不安を描いた“だけ”の回です。2か月分・20ページをそれにあてる意味。改めてすごい作家さんだと再確認させられました。


読んでいるこちらにも緊張が伝わってきました。それはあーちゃんの演劇祭に向けての緊張でもあるのですが、ふみちゃんがかける優しい言葉と、それに対するあーちゃんの反応に本当にどきどきしました。


この回の演出は本当にしびれまして。p74であきらの手が映し出されるのですが、画面上では震えてないんですね。それから3ページ後に

さっきから ふるえが 止まんないの

というセリフがあるので、あきらは控え室でずっと震えていたというわけなんですが、p74では震えているように描いてない。これが逆に「物凄く緊張している」という心情を的確に描き出していて見返すたびにすごいな、と感心します。白いコマがさらに緊張感を増大させています。

ここからのあきらの表情もすごいというか、“緊張している”感がひしひしと伝わってきます。絵だけで。「ドクンドクン」とか、震えをあらわす漫符とか、モノローグとか一切なしです。ふみに声をかけられても反応を返せなかったり、弱音を吐いたりで、いつもと違う弱いあきらが垣間見えます。これがすごく自然。

そしてここからふみのフォローが入りますが、読んでて「ここだ」と思いました。ほら、あるじゃないですか。ここがって場面。それがここです。このシーンです。そんなシーンを見せられて、こっちが緊張して震えてしまいました。こんな優しい言葉かけられたら…。演劇祭が終わった後が楽しみでなりません。

しかしふみは本当に昔からだめな子だねえ……。いや、いい子ですけど。


この緊張感のある2人のあとのモギーと忍には笑ってしまいました。…ダメかもこの2人。というか、キスすらまだとか忍は本当にもう外の人間にはヘタレですね。こっちはこっちでモギーとの間の空気に緊張してたのかもしれませんが…しかし、さすがによく妹のことをご存じでらっしゃる。それにしてもモギーの「あ!?」が自然すぎてていいな、と思います。



話は前後しますが、p69扉絵(の上田さんも素敵)の後、本編最初のセリフ

にわかファンが増えたわね

には、本当に脱帽しました。この時期にこのセリフ。他意はないと思いますけど、本当に素敵すぎます。


井汲さんと康ちゃんの関係と、大野がひとつの答えを見つけてしまったあとどうするのか(あとモギーと忍は大丈夫なのか)、見所がありすぎてページ数が足りません。次回が待ち遠しいです。


次回といえば、次回のエロfは青い花大特集号です。「青い花トリビュート」ということで、色んな漫画家さんの青い花キャラが拝める模様。漫画家さんの間でもまったく話題に出ない志村先生なので、どんな方が寄稿されるのか楽しみです。




河内遙関根くんの恋
到達点は全然見えませんけどもそんなところを気にする作品ではないとは思っています。イケメンエリートだけど人生を損している関根くん(30)がとりあえずいろいろ頑張るお話。

前作「ケーキを買いに」でも垣間見えてますが、作者さんが時折見せる狂気的な表現は自分にないものですごいな、と思います。今回でいえば

ガリやせの女を)見てると
あの関節をポキポキ折って 梱包しそうになる

です(※別に殺意とか猟奇的な何かではありません)。大関さんが好きだったのもそういう理由なのか、とちょっと納得(?)


しかしガリやせ女の件にしても、その後の編み物の件にしても、ちょっとトラウマ持ちすぎですよこの人。面倒くさい人だなぁ、と。面倒くさくてごめんなさい。次号はどういう方向に転ぶかわかりませんが楽しみにしてます。




鬼頭莫宏「終わりと始まりのマイルス」
ほのぼの回だったんですけど、自警団のオヤジさんが大ゴマで

そういや親父さんが
さみしがってたぞ

というシーンで「死亡フラグか?」と思ってしまったのは私が病んでいる証拠でした。




桂明日香「美少年名言集」
いやもう、趣味悪いだろうと、ひとでなしだろうと構わないです。面白い。1ページ目、扉、ラストのページをギャグにすることで後味の悪さを(いい意味で)誤魔化していますが、中身は物凄く陰惨で救いのないお話です。

みんな死ねばいいのになあ

というセリフは余裕で出てきます。

「美形を何回でもひどい目にあわせられる」と「暗くて重くてシリアスな話」を両立できていて、作者さん楽しんで描いてそうオーラがひしひしと伝わってきます。どうやら私には『俺が必ずお前を心の闇から救い出してやる』なんて言う機会はなさそうです…というか普通ありませんから。




柘植文「僕とおませちゃん」
今回一挙3話掲載でした。地味に好きです。ベースにエロいことがあって、それを子供の無垢な視点であれこれさわっちゃうショートコメディです。作者さんは女性の方ですけど、たまに男性思考なシーンもあったりしててときどきビックリします。制服マニアのママとか地味にいいキャラ出てるなぁ、と。あと色々と大人になってしまった浦島君のキャラが立ちすぎてて面白いです。
今回、子どもたちだけでAVをこっそりみるお話があって

振り返ったら全然女子高生じゃなかったよー
うちのママより年上だったよー こわいー

とかいう一連の説明口調がすごく面白かったです。




雁須磨子「幾百星霜」
いきなり野球漫画なるかと思いきやそんなことはなくてひと安心でした。事あるごとに体重を気にする杉内さんが微笑ましいです。というか野球してたはずなのに何で包帯ぐるぐる巻きになってるのか保太郎ぼっちゃん…。




◆松本藍「生きろ!モリタ
ダメだなぁ…好きだなぁ…こういう話。なんか単行本1巻分くらいで読んでみたい感じです。




今回ちょっと誤字が多かったのが気になりました。前回もチョンボがありましたし…。好きな雑誌だからこそ、最低限は頑張ってほしいです。大変だと思いますけども。そんなわけで次号も楽しみにしています。